このところの大会で、Next Genのホープ オジェ・アリアシム選手や、ダビド・ゴファン選手を破り、復調の気配著しい錦織圭選手、そのプレースタイルの特徴はどんなところにあるのでしょうか?
一時は最高位4位という、偉業を達成している錦織圭選手ですが、ツアーの中でも小柄な部類に入り、ビッグサーブを持っているわけでもありません。
この偉業の秘訣がどんなところにあるのか、錦織圭選手のプレースタイルの特徴に迫ります!
錦織圭のプレースタイルや特徴
錦織圭選手のプレースタイルや特徴をまず一言で表すとすると、アグレッシブ・ベースライナーといえるでしょう。
錦織選手のファーストサーブ速度は、MAXでもほぼ200キロ弱、肩の故障後は、最速180~190キロ程度で推移しています。
現代テニスのプロツアーレベルからいくと、200キロ超は当たり前、時には220~230キロといった超高速サーブが頻繁に飛び交う現状から、サービスエースをガンガンとるタイプではありません。
錦織選手は、サーブはプレースメントを重視し、ストローク戦に持ち込む際に主導権を握れるよう打ち込んでいます。
もちろんサーブによるフリーポイント、またリターンされてからの3球目攻撃でポイントを奪えれば理想的なサーブゲームが展開できます。
ラリー戦に持ち込むことは想定内、錦織選手の土俵です。
コート内に入ってのタイミングの早いショットで相手の時間を奪ってストロークエースを決める、あるいは抜群のタイミングで放つドロップショットは観衆を何度うならせたことでしょうか!
またこのところは積極果敢にネットを取るプレーも増え、テニスの幅が広がっています。
そしてツアーでも屈指のバックハンドダウンザラインの精度は、錦織選手の切り札とも言っていいいショットです。
リターンゲームにおいては、高速サーブに耐えて何とかラリー戦へ持ち込み、展開の中でこれまでも幾度となく鮮やかなバックハンドダウンザラインを決めてきました。
錦織選手を世界4位にまで押し上げたのはこのショットがあったからこそ、といっても過言ではないでしょう。
それでは錦織選手の各ショットの特徴を詳しく見ていきましょう。
錦織圭のサーブ
テニスセンスの塊とも思えるような錦織選手ですが、唯一といってもよい弱点がこのサーブでしょう。
前述のようにファーストサーブのスピードは際立ったものではないため、コート外に向かって切れていくスライスサーブ、センターへのサーブ、ボディへのサーブを効果的に使い分けています。
最近起きた肩の故障後は、バックスイング時に下からラケットを持ってきていた動きから、あらかじめ上にラケットを置いておくように、ややサービスのフォームを変えています。
この変更は中々良い方向に行っているようで、スピードはさほど上がっているわけではありませんが、回転量が増大し、安定感が増しています。
錦織選手のセカンドサーブは、トップスライスとスピンの中間くらい(プロが良く使うセカンドサーブの打ち方)でバック側に高く跳ね上げるものです。
一般的に考えれば最も打ちづらいところに来るサーブのはずですが、190センチ以上の長身選手がゴロゴロいるツアーでは、待ってましたとバックハンドで上から打ち込まれるケースが見受けられます。
プノワ・ペール選手などが代表例で、ものすごいリターンを食らって錦織選手がいつも苦戦する光景が焼き付いています。
こうした展開は一気にサービスゲームを不利にするので、錦織選手もセカンドサービスでのプレースメントを、バック一辺倒ではなく、考えた配球をするようになっています。
厳しいツアーの世界ですから、ひとたび弱点が露呈されると、そこをどんどんついてきます。
これをどう克服するかが、錦織選手今後の活躍を左右するでしょう。
錦織圭のリターン
錦織選手のリターンは、世界でも最高峰のレベルです。
リターン力世界一は何といってもノバク・ジョコビッチ選手ですが、錦織選手はジョコビッチ選手に勝るとも劣らないパフォーマンスを持っています。
その特徴は読みの良さです。
鋭い観察眼を持っている錦織選手は、相手のちょっとしたクセを見抜き、飛んでくるコースを読む確率がとても高いのです。
リターンサイドで自分のマッチポイントとなり、鮮やかなリターンエースを決めて勝利!などというシーンももう過去幾度となくありました。
テニスではいくらサーブゲームをキープしても、最終的には相手サーブを破らなければ勝利はありません。
全く互角でタイブレークに持ち込まれても、ミニブレークしなければ勝てないのです。
オペルカ選手やイズナー選手などのビッグサーバーは、タイブレークが多いですが、その理由がここにあります。
ほぼ崩れそうもないサーブの牙城がありながら、相手サーブをブレークしてゲームを取り切るまでのリターン力がないのでしょう。
タイブレークに持ち込み、ミニブレークして頭一つリードしてセットを奪う、これがビッグサーバーの戦略です。
錦織選手はたぐいまれなるリターン力を持っているので、上位ランクをキープすることができるのです。
錦織圭のフォアハンド
厚いグリップから、スピンの効いた鮮やかなストロークボールが繰り出される錦織選手の美しいフォアハンドは、まさに芸術品です。
そして、ストローク戦を有利に導く錦織選手の大きな武器が、早いタイミングでのライジングショットです。
プロテニス選手が打つストロークは、ウィナーなどが決まったときは135キロ~140キロというとてつもないスピードが出ています。
錦織選手ではありませんが、先日ある大会での試合で、150キロのストロークウィナーも出ました。
驚異的なスピードですね!
ますます高速化が進むテニス、ラリーのスピードも半端ない状況になっています。
そのボールをライジングという難しいタイミングで適格にとらえ、コースも狙っていくわけですから、まさに錦織選手は天才といえるでしょう。
またライジングでとらえたボールは、相手が打ってきた勢いを利用できるため、まさにカウンターパンチのように効いてきます。
有利に展開してくると、錦織選手はストロークウィナーだけでなく、ドロップショット、ネットプレー、そしてあの華麗なるエアケイを見せてくれます!
錦織圭のバックハンド
錦織選手のバックハンドは、世界ランク4位にまで押し上げた錦織選手最強の武器です。
現代テニスでは、バックハンドストロークの能力がランキングに大きく影響していると言っても過言ではありません。
世界ナンバーワンに君臨するノバク・ジョコビッチ選手はバックハンドでも世界有数、数々の苦難を乗り越えています。
最近ではバックハンドをすさまじく強化してきているラファエル・ナダル選手、レジェンド ロジャー・フェデラー選手は唯一の弱点とも言ってよいバックハンドを成長させ、40歳の声をきこうとする今もトップランカーとして君臨しています。
シングルバックハンドの威力充分な、ドミニク・ティーム選手、スタン・ワウリンカ選手、ステファノ・チチパス選手。
錦織選手と似たタイプで、ダブルバックハンドダウンザラインを得意としているダビド・ゴファン選手、美しいダブルバックハンドを放つサーシャ・ズべレフ選手。
そして少し変則的ではありますが、ダニール・メドベージェフ選手もバックハンドが得意です。
厳しいツアーの世界、少しでも弱点が露呈すると、徹底的にそこを攻撃され、試合で勝てなくなってしまいます。
つまりバックハンドにある程度以上の威力がないと、ランキングを押し上げることはかなり難しくなっているということです。
錦織選手のバックハンドは、世界有数です。
あるテレビ番組の、テニスストロークショットで制限時間内にいくつ的に当てることができるのかのコーナーに錦織選手が出場した際、フォアハンドではなくバックハンドで臨みました。
それくらいバックハンドに自信を持っているということでしょう。
相手から見れば右サイドのコーナーギリギリ、あるいはオンラインに鋭い錦織選手のバックハンドが飛んでくるわけですから、これには参ったとなるしかありません。
そしてその精度はまさにピンポイント、美しいラインを描いたボールは、吸い込まれるようにコーナーへ決まります。
まさに胸のすくようなショット、バックハンドは錦織選手最強の武器なのです。
錦織圭のボレー
天性のボールタッチを持つ錦織選手、ボレーも得意としています。
最近では、展開によってはアプローチからネットプレーでポイントを奪ったり、ここぞのタイミングでサーブ&ボレーを繰り出したり、プレーの幅が広がっています。
どちらのプレーも、ボレーのプレースメントがキーになります。
錦織選手のボレーは、コースが素晴らしく、ネットプレーポイント奪取率も高いです。
ある試合で、錦織選手が極めて難しいハーフボレーを打たされましたが、それを難なくプレーした場面、解説者はこのプレーはまさに天才肌であると絶賛していました。
また、最近マクラクラン勉選手と錦織選手がペアを組んで大会に出場していました。
世界でもトップクラスといえるダブルス巧者のマクラクラン選手と錦織選手のペアなど、まさに夢のペアですね!
まとめ
2021年31歳になった錦織選手、幾多の故障などの苦難を乗り越え、今シーズンは更に成長した姿を見せてくれています。
そんな錦織選手のプレースタイルに迫ってみましたが、いかがだったでしょうか?
若手有望選手もどんどん出てきている昨今ですが、錦織選手がまた胸のすくプレーをみせてくれることを期待しています!
また、ミルニー新コーチとの関係も大変良好なようです。
天才錦織圭は健在なり!
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