ケガなどで苦しんできた日本テニス界のエース錦織圭選手、ケガをして休むたびに強くなって復活する、という強豪選手の道を歩んでいます。
コートでの練習が出来なかった不運も重なって、初戦敗退だった全豪オープンでしたが、続く大会では、どんどん試合内容が良くなってきています。
さすが錦織圭と思わせるプレーも随所に!
そんな錦織圭選手は、どんなガットを使い、テンションはいくつで張っているのでしょう?
ここでは、錦織圭選手の使用ガット、そしてテンションの張り具合について取り上げてみました。
錦織圭の使用ガット【2021年】
錦織圭選手が、現在使用しているガットは以下の通りです。
- メイン(縦) : ウィルソン ナチュラル17 (1.25mm)
- クロス(横) : ルキシロン エレメント (1.25mm)
それぞれ詳しく紹介していきます。
メイン(縦):ウィルソン ナチュラル17 (1.25mm)
ウィルソン ナチュラル17は、ナチュラルガット、いわゆるテニス創成期から使用されている、動物の小腸を素材としたガットです。
ガット(gut)という言葉自体が、腸を意味しますので、厳密にいうとガットは動物の小腸を使用したものでなければなりませんが、現在では一般的名称として、天然素材で作られていないものも、ガットと呼ばれることもあります。
ナチュラルガットの特性、長所は以下です。
- 打球感がよく、打点時にボールを包み込むようにホールドし、戻りも早い。
- 飛びが良いので、追い込まれた場面でもボールを返せる確率が高くなる。
- テンション持ちが良い。
反面、以下のような短所もあります。
- 雨などの湿気に弱い。
- 合成素材に比べて切れやすいと言われているが、合成素材が熱に弱く、摩擦によって切れることに比べ、熱に強いのであくまでガットそのものの摩耗、擦り切れによって切れるので、ものによっては合成素材よりも切れにくいともいえる。
- 飛びが良い反面、飛びすぎてしまうことがあり、プロにとってはこれが問題。
打球感、フィーリングをとても大事にする錦織選手、ナチュラルガットの採用はうなずけます。
しかし、こういったナチュラルガットの長所をいかしつつ、飛びすぎてしまうというプロにとっては大きな問題を解決するため、メイン(縦)にナチュラルガット、クロス(横)に合成素材ガットを張り、ハイブリットとするプロが多いのです。
錦織選手もそんなハイブリットガットを採用している選手の一人です。
クロス(横) : ルキシロン エレメント (1.25mm)
合成素材のガットには、大きく分けてポリエステルとナイロンの2種類ありますが、このルキシロン エレメントは、ポリエステルのガットです。
大まかにいえば、ポリエステルはハードヒッター向き、ナイロンはコントロールを重視するプレーヤー向きと言えます。
プロテニスプレーヤーが求めるものは、ボールを潰す、強烈なスピンをかける、超ハードヒットしてコート内に入れるといったことですから、ポリエステルはとても向いています。
ポリエステルガットの特性、長所は以下です。
- ボールを潰す、ハードヒットの打球感
- ショットしたボールが速く、重くなる
- 摩擦係数が少ないため、ガットが良く動き、スピンをかけやすい
- 耐久性が高い
反面、以下のような短所もあります。
- ハードな打球を打てる分、衝撃が大きく、手首、肘などへの負担が多い
- テンションの維持性能が低いので、テンションが短期間で変わってしまう
- ある程度のスイングスピードを持たないと、硬さが前面に出てくるため、ボレーやスライスを多用するプレーヤーにはあまり向かない。
錦織選手は、シングルス・プレーヤー、グランドストローカーですから、求めるポイントはポリエステルガットの長所にあたるところです。
ナチュラルガットの柔らかさ、打球感の良さ、飛びの良さに、ポリエステルガットの力強さ、強烈なスピン、打球の速さなどを求め、ハイブリット化したガットセッティングとしていることがうかがえます。
錦織圭の過去の使用ガット
錦織圭選手は、プロデビュー当時よりハイブリッドのガットを使用していましたが、途中驚くべき変更をしています。
2008年と2018年のガットセットを見てみましょう。
■2008年
- メイン(縦) : エンデューロプロ16 (1.3mm)
- クロス(横) : ウィルソンナチュラル16(1.3mm)
■2018年
- メイン(縦) : ウィルソンナチュラル125 (1.25mm)
- クロス(横) : ルキシロン 4G-SOFT(1.3mm)
それぞれ詳しく紹介していきます。
【2008年】メイン(縦) : エンデューロプロ16(1.3mm)
メインガットにポリエステル素材のエンデューロプロを採用、16はゲージ数を意味しますが、1.3mmです。
【2008年】クロス(横):ウィルソンナチュラル16(1.3mm)
クロスガットにナチュラルガットであるウィルソンナチュラルを採用、ゲージ数16ですので1.3mmとなります。
つまり、メインにポリエステルガット、クロスにナチュラルガットを張っていました。
【2018年】メイン(縦) : ウィルソンナチュラル125(1.25mm)
現在使用しているガットと同じです。
メインにナチュラルガットを採用しています。
【2018年】クロス(横) : ルキシロン 4G-SOFT (1.25mm)
現在のルキシロン エレメントの前は、この4G-SOFTを使用していました。
ポリエステルガットにしては、打感が柔らかめの特性を持つガットです。
すなわち錦織選手は、メインとクロスのガット種類を、キャリアの中で、まるっきり入れ替えています。
そしてガットの太さも当初の1.3mmから1.25mmに変えています。
これはストリンガーに言わせると、中々珍しいケースであるということです。
錦織圭のガットのテンション【2021年】
錦織選手のガットテンション情報は、中々2021年版がありません。
また試合会場当地の気候により、テンションもかなり幅を持っています。
2019年全米オープン時の、テンションセッティングは下記です。
メイン(ナチュラル)48ポンド、クロス(ポリエステル)45ポンド
2021年全豪オープン時のセッティングが知りたいところですが、全米が晩夏・初秋の気候、全豪は例年真夏の気候です。
但し2021年は、コロナ禍のため全豪の日程が少しずれ、選手からクレームが出るほどの例年の酷暑ではなかったようです。
従って、錦織選手も全米セッティングとほぼ同じか、若干硬めにしていたと類推できます。
錦織圭のガットのテンション(以前)
錦織選手は、最近では肩、以前は肘、手首を故障したことがありました。
そういったフィジカル面を気遣ってか、最近は以前よりも柔らかめにガットを張っています。
前述の通り、試合会場当地の気候により、ガットテンションは異なるため、同じ試合会場で過去の数値を比較してみましょう。
2016年と2018年のATPツアーファイナル、すなわち冬場のイギリス ロンドンで実施される大会です。
この大会の錦織選手ガットセッティングを、2016年と2018年で比較してみましょう。
気温が低い→柔らかめに 気温が高い→硬めにという傾向がありますので、ATPツアーファイナルでは柔らかめにガットを張っています。
2016年 メイン:45,44,43ポンド クロス:43,42,41ポンド
2018年 メイン:40,39,38ポンド クロス:38,37,36ポンド
メイン・クロスとも5ポンド程度テンションを落としているのです。
また1試合の中でも、微妙にテンションを替えたセッティングのラケットを準備していますね。
錦織選手らしい一面がうかがえます。
そしてメインのナチュラルガットをやや硬めに、クロスのポリエステルガットをやや柔らかめに、張っています。
まとめ
以上、錦織圭選手が使用しているガットについて、過去から最新版までをまとめましたが、いかがだったでしょうか。
おさらいしますと、錦織圭選手が、現在使用しているガットは以下の通りです。
■2021年
- メイン(縦) : ウィルソン ナチュラル17 (1.25mm)
- クロス(横) : ルキシロン エレメント (1.25mm)
■2008年
- メイン(縦) : エンデューロプロ16 (1.3mm)
- クロス(横) : ウィルソンナチュラル16(1.3mm)
■2018年
- メイン(縦) : ウィルソンナチュラル125 (1.25mm)
- クロス(横) : ルキシロン 4G-SOFT(1.3mm)
テンションについては、2021年の公式セッティングは公表されていません。
2019年全米オープン時は
メイン(ナチュラル)48ポンド、クロス(ポリエステル)45ポンド
であり、現在はこのセッティングと同じ、もしくはやや硬めに貼っているのではないかと考えられます。
また、過去のガットセッティングは以下の通りです。
2016年 メイン:45,44,43ポンド クロス:43,42,41ポンド
2018年 メイン:40,39,38ポンド クロス:38,37,36ポンド
オンラインでしかもコーナーをとらえる鮮やかなストロークショット繰り出す錦織選手、特にバックハンドダウンザラインショットは、世界でも有数のほれぼれする切れ味ですね!
そんな錦織選手は、フィーリングや打感を極めて大切にしています。
ボールが直接触れるガットは、その中でも最もセンシティブなパーツと言えるでしょう。
クロスとメインの素材を全く入れ替えるなど、過去に例をみないような変更をしている錦織選手、常日ごろからフィーリングの向上を求めて、試行錯誤している姿がみえます。
テンション1ポンドの差が、勝敗を分けるショットのイン/アウトに結び付くかもしれない、プロは、そんな紙一重でツアーを戦っている厳しい世界なのです!
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