ラファエル・ナダル選手、19歳で全仏を制覇した衝撃から17年、常に世界のトップを争ってきているレジェンドの一人です。
典型的なストローカーであるナダル選手ですが、サーブは年齢を重ねるごとに進化しています。
アップしている速度、どんなグリップで握っているのか、そしてナダル選手の大きな特徴である長いルーティン、このあたりは大変興味をそそるところです。
ここではナダル選手のサーブについて、速度、グリップ、長いルーティンなどにスポットをあて、解説していきます。
ナダルのサーブの特徴は?
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ナダル選手のサーブの特徴は以下の5つに分けられます。
- 特徴①典型的なスライスサーブ
- 特徴②ダブルフォルトが少ない
- 特徴③長いルーティン
- 特徴④サーブ速度、回転量の変化
- 特徴⑤プレースタイルの変化
ではそれぞれ詳しく紹介していきます!
特徴①典型的なスライスサーブ
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ナダル選手のサーブの特徴1つ目は、典型的なスライスサーブです。
そしてサーブのグリップは、バックハンドグリップに近い、いわゆる「薄い」グリップで握っています。
ナダル選手の場合、ファーストサーブもセカンドサーブもともにスライスサーブを放ちます。
これはナダル選手が、サーブ1本でポイントを取りに行くタイプではなく、ストローク戦や展開テニスで優位に立つ試合運びをするためです。
薄いグリップで握り、スピードよりも回転を重視して、深さやプレースメントを意識する、というのがナダル選手のサーブ基本戦略です。
若いころのナダル選手のサービスフォームと現在は変化してきていますが、サーブの特性であるスライスサーブをベースにしているところは変わっていません。
ナダル選手の原点はクレーコート、全仏を13回も制覇して、17年間でたった3回しか負けていない(棄権1回)わけですから、驚異的、クレーコートの神様です。
サーブはまず以降のストローク戦で優位に立つためのキーであり、ストローク戦に絶対の自信を持っているナダル選手ですから、ファーストサーブといえどもスライスサーブでプレースメントを重視する戦略をとってきました。
スライスサーブはナダル選手のサーブの原点ともいえます。
特徴②ダブルフォルトが少ない
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ナダル選手のサーブの特徴2つ目は、ダブルフォルトが少ないです。
特徴1つ目で紹介したスライスサーブ戦略から、ナダル選手はダブルフォルトの少ないプレーヤーとして有名でした。
毎試合、毎大会、一試合にほんとに1度か2度しかダブルフォルトを犯さないという、驚異的な記録を残してきています。
時にはダブルフォルトゼロという試合もありました。
プレースメント重視のスライスサーブ主体とはいえ、試合を左右するようなブレークポイントの場面とか、これをキープしなければほぼ敗戦といった土壇場など、考えられないようなプレッシャーのかかるポイントがあるわけですから、驚くべきメンタルです。
ナダル選手本人がサーブについて、ファーストサーブは深さとコースを意識して、速いサーブは使わない、セカンドサーブでは体を開かないようにして回転を多めにかけることを心掛けている、と語っています。
ナダル選手のサービスフォームを背中側から見ると、特にセカンドサーブでは全くと言っていいほどインパクトまで体を開いていません。
ずっと背中が見えているという映像イメージがあります。
これは一般プレーヤーも非常に参考になるでしょう。
ダブルフォルトが少ないと語ってきましたが、後述するサーブ速度の高速化、プレースタイルの変化から、この2-3年のナダル選手は以前に比べるとダブルフォルトが多くなってきています。
今までは見たこともない、連続ダブルフォルトなども犯してしまうという変化を見せています。
特徴③長いルーティン
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ナダル選手のサーブの特徴3つ目は、長いルーティンです。
選手はそれぞれ独特のルーティンを持っていますが、ナダル選手の長いルーティンは際立って特徴的です。
ナダル選手のルーティンの物まねをするお笑いタレントもいます!
クレーコート、グラスコート、ハードコートでルーティンはやや異なります。
クレーコートでは、まずベースラインを足できれいに土を払い、センターマークをこれも足で触れてから、サービスポジションに入ります。
グラスコート、ハードコートではこの土を払うルーティンがありませんが、以降はほぼ同じです。
サービスポジションに入ると、まずラケットでボールを数回つき、耳にかかる髪の毛をぬぐい(若いころは長髪でしたのでこれが必要でしたが、最近の短い髪の毛でもやります)、手でボールをさらに数回つき、滴る汗をぬぐい、(これを繰り返す場合もあります)ようやくサーブを打ちます。
現在はポイント間ショットクロック制度のためできませんが、以前は上記のルーティンに加え、靴下を触って折り目を正したりといったこともしていました。
このルーティンで放ったサーブを続け、グランドスラム21回も優勝しているわけですから、これを踏んでいかないと落ち着かないし、勝利への方程式の始まりなのでしょう。
特徴④サーブ速度・回転量の変化
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Just some fun times with my partners… 😉 #AmstelOro00 #Elsabordehacerlobien pic.twitter.com/0CCH0JFngX— Rafa Nadal (@RafaelNadal) September 17, 2021
ナダル選手のサーブの特徴4つ目は、サーブ速度・回転量の変化です。
ナダル選手のサーブ速度は劇的に変化しています。
今年誕生日を迎えると36歳になるナダル選手ですが、サーブ速度に関しては、年齢を追うごとに速くなっている気すらします。
2019年全米オープンでは、ビッグ3のフェデラー選手、ジョコビッチ選手、ナダル選手のうち、平均ファーストサーブスピードが最も速かったのはナダル選手という、意外な結果が出ています。
全仏初制覇から2~3年のナダル選手は、ファーストサーブでも170キロそこそこのスピードしか出ませんでした。
したがってナダル選手がサービスエースを取ることはまれで、サーブをまず次の展開で有利になるように打ち込み、絶対の自信を持つストローク戦でポイントを重ねていくスタイルでした。
2009年、2012年、2014年、2016年の後半、そして2021年とナダル選手はケガによるツアー離脱を余儀なくされてきました。
ケガで離脱する度に不死鳥のようによみがえり、以前よりも強さを増して帰ってくるナダル選手、復帰するごとにサーブのスピードが増してきた感があります。
2022年6月には36歳を迎えるナダル選手、しかし若いころの170キロそこそこのサーブは、現在200キロ近く出るようになっています。
さらにもう一つ思えるのは、サーブの回転量のアップです。
もともとスピードよりも回転量を重視してきたナダル選手ですが、より強くヒットすることにより、スピードも回転量もどちらもアップしてきています。
アドコート側からの外へ逃げるサーブは当然健在、アドコートでのポイント奪取に絶対の自信を持っているナダル選手のオープンコートを作る基本戦略です。
これにスピードを増したファーストサーブが加わり、ますます大きな武器となっています。
センターへのサーブも織り交ぜるため、サーブフリーポイントや、エースも多くなっています。
これとともに変化してきたプレースタイルを次の章で説明しましょう。
特徴⑤プレースタイルの変化
不屈の闘志で新記録 ナダル、ボレーも駆使―全豪テニス#全豪オープンテニス #ラファエル・ナダル https://t.co/xLkN8Celoz
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ナダル選手のサーブの特徴5つ目は、プレースタイルの変化です。
稀有の戦略家であるナダル選手のプレースタイルはかなり変化しました。
従来からナダル選手の基本戦略は、相手選手のバックハンドへの攻撃です。
突出したストローク力で高スピン、高弾道のボールを相手バックハンドに集め、ミスショットやチャンスボールを引き出して仕留めてポイントとする、これを基本としています。
ナダル選手が頭角を現したころ、世界トップはご存知ロジャー・フェデラー選手。
サーブスピード、コントロール、そして世界一と言われたセカンドサーブ、強烈なストローク、神業のようなネットプレー、そして動きの速さ、展開の速さ、フェデラー選手はまさに無敵状態でした。
唯一わずかに穴があるとすればバックハンドでしたが、もちろんハイレベルであるため、そこを突いてもバックハンドで逆にウィナーを決められてしまうといった有様でした。
ナダル選手にとってフェデラー選手は目標であり、打倒フェデラー選手なくして世界ナンバーワンはあり得ませんでした。
ナダル選手はテニス界で有数の戦略家です。
少々力のあるショットでは跳ね返されるフェデラー選手のバックハンド、そこへとてつもないスピン量、高弾道のボールで攻撃する戦略を練り上げ、研究、練習を重ねました。
特にボールの弾むクレーコートではこの戦略が功を奏し、全仏であの無敵フェデラー選手がナダル選手にどうしても勝てなかったのは有名な話です。
世界ナンバーワンになったナダル選手を、ヒタヒタと追いかける選手がいました。
そう、ノバク・ジョコビッチ選手です。
当初ジョコビッチ選手はナダル選手に中々勝てませんでした。
ジョコビッチ選手にとって世界ナンバーワンになるには打倒ナダル選手が必須条件、ナダル選手以上と思える研究、戦略、練習、そして自己体質改善を果たしたジョコビッチ選手は、ナダル選手のバックハンド戦略を逆手に取り、両手打ちバックハンドでスピンボールをライジングで押さえるという、高度な技術を身に着けました。
そして一時期ナダル選手はジョコビッチ選手に全く勝てなくなった時期がありました。
2015年の不調、2016年後半のケガ、ナダル選手はもう限界なのではと思われた、2017年全豪オープン、新しいプレースタイルとなったナダル選手が戻ってきたのです。
そしてやはり華麗なる復活を遂げたフェデラー選手とよもやの決勝を戦うとは誰も予想できませんでした。
ナダル選手は、2016年オフに徹底的にサーブとバックハンドを鍛えてきたことがありありと感じられました。
サーブのスピードが増し、サーブフリーポイントが増えました。
このころ、すでにサーブスピードは190キロを超えてきています。
そして、コートの後方で高弾道スピンボールを打ち続けていたナダル選手が、時にはコートの中に入り、速いタイミングでボールをとらえるように変化したのです。
バックハンドの驚異的なスピードアップ、プレースメントの進化、そしてネットプレーを駆使する姿は、まさにニューナダルです!
そして2017年~2018年前半ナダル選手は絶好調のシーズンを送りました。
まさに進化し続けるナダル選手、グランドスラム21回制覇の実績はこういったことに裏付けされています。
まとめ
21 majors 🏆
One @RafaelNadal 💪🇦🇺 #AusOpen • 🇫🇷 @rolandgarros • 🇬🇧 @wimbledon • 🇺🇸 @usopen pic.twitter.com/rDASLCnaDH
— #AusOpen (@AustralianOpen) January 31, 2022
以上、ナダル選手のサーブの特徴を紹介してきました。
最後にまとめますと、ナダル選手のサーブの特徴は5つに分けられることがわかりました。
- 特徴①典型的なスライスサーブ
- 特徴②ダブルフォルトが少ない
- 特徴③長いルーティン
- 特徴④サーブ速度、回転量の変化
- 特徴⑤プレースタイルの変化
ナダル選手は、度重なるケガに苦しめられていますが、膝や手首の場合が多いように見受けられます。
肩や肘といった部位はあまり聞いたことがありません。
そういった意味合いで、サーブに関しては練習を積んでこれたのかなと思われます。
もう若いとは言えない年齢で、さらにサーブのスピードが上がっているナダル選手、成長をいまだし続けています。
コート中を走り回り、相手のスーパーショットをことごとく拾いまくり、逆にウィナーを決めていた若かりし頃のナダル選手から、大きな変化を見せている最近ですが、サーブの成長は目を見張るものがありますね!
今後もナダル選手のプレーから目が離せません!
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